大豆たん白健康情報センター

大豆たん白とは?

「ご存知ですか?大豆たん白質のアミノ酸スコアが100であることを」

第55回 日本栄養改善学会学術総会
大豆たん白健康情報センター・ランチョンセミナー報告

大豆たん白健康情報センターは2008年9月6日、第55回日本栄養改善学会学術総会にて、ランチョンセミナーを開催いたしました。セミナーでは、長崎国際大学の山本孝史先生(健康管理学部・健康栄養学科教授)を座長に、お茶の水女子大学大学院教授の山本茂先生に「ご存知ですか? 大豆たん白質のアミノ酸スコアが100であることを」と題して、ご講演いただきました。講演のテーマにちなんで、参加者には大豆たん白製品をおかずに使った特注弁当が用意され、大豆たん白を使ったお総菜をお召し上がりいただきながらの、和やかなセミナーとなりました。

世界でクローズアップされる大豆

 私は海外に行くと、その国の人々の生活ぶりを知るために、よくスーパーマーケットに立ち寄るのですが、ここ数年のアメリカの豆乳人気には、目を見張るものがあります。アメリカ人に話を聞くと、「豆乳は少し前まで『青臭い』というイメージがあったが、最近では味も改良されて、ずいぶんおいしくなった」と言っていました。牛乳が飲めない「乳糖不耐症」の人などには、特に好まれているようです。
 また研究の分野では、日本でも大豆たん白の生理効果について、意欲的な研究が進められていますが、アメリカでも、大豆の健康効果に関する研究会「Soy Nutrition Institute」が大変な盛会となっています。このようなことからも、大豆は世界的にクローズアップされてきていると感じています。

体を構成する20種類のアミノ酸

 大豆は昔から“畑の肉”といわれてきました。大豆はたん白質の含有量が高く、乾燥大豆100g中には、35.5gのたん白質が含まれています。また大豆は「量」だけでなく「質」の点でも、とても優れたたん白食品なのですが、その話をする前に、たん白質を構成しているアミノ酸について、簡単に説明したいと思います。
 私たちの体をつくっているたん白質は、図1に示した20種類のアミノ酸からできています。そのうち9種類は、体内で合成できないため、食事などからの摂取が必要な「必須アミノ酸」です。必須アミノ酸は以前は8種類でしたが、1985年にヒスチジンが追加され、現在では9種類になっています。
 「準必須アミノ酸」は、生体内で作られますが、効率がそれほどよくないため、摂取が勧められるアミノ酸で、5種類ほど知られています。そして残りの6つのアミノ酸は、生体内で合成が可能、すなわち食事から摂らなくてもよい「非必須アミノ酸」です。ただしここで注意したいのは、必須か非必須かは、体内で合成できるかどうかの違いに過ぎない、ということです。たん白質合成のうえでは、非必須アミノ酸といえども、不足すればたん白質合成量も不足してしまうということでは、必須アミノ酸と同じです。非必須アミノ酸というと、“あまり大切ではないアミノ酸”のように思われることがありますが、これは誤解です。必須であっても非必須であっても、体にとってはどちらも重要なアミノ酸です。

1985年以来、大豆のアミノ酸スコアは100

 大豆のたん白質は、牛乳や卵など、動物性のたん白質と比べて、質的に劣るといわれてきました。アミノ酸は一定の比率でたん白質の合成に使われるので、必須アミノ酸が一種類でも不足していると、その不足したアミノ酸に対応した量しか、たん白質はつくられません。つまり、たん白質が十分に合成されるには、必要なアミノ酸がすべて揃っていなければならないわけですが、1973年にFAOとWHOの合同委員会が策定した必須アミノ酸必要量では、大豆はメチオニン等の値を満たしていなかったのです(図2)。
 しかし、必須アミノ酸の必要量は、後で述べる測定方法の進展などにより、1985年に大きく見直されました。改訂後の必須アミノ酸必要量では、大豆のたん白質は、各年代の必須アミノ酸の必要量をすべて満たし、アミノ酸スコアでは最高点100のたん白質であることが明らかになりました(図3)。他の食品と比較してみても、大豆のたん白質は、牛乳の主たん白質であるカゼインや卵白と同レベルで、牛肉などより、質的に優れていることが分かります(図4)。
 なお、必須アミノ酸の必要量は、昨年2007年に再度改訂されていますが、その値でも大豆のたん白質は、すべての必須アミノ酸の必要量を満たしています(図5)。

図2
図3
図4
図5

必須アミノ酸必要量の測定方法

 必須アミノ酸必要量の測定には、これまでいくつかの方法が用いられてきました。伝統的に用いられてきたのは、アミノ酸の摂取量と体重増加の関係に着目した方法です。特定のアミノ酸含有量を少しずつ変えていき、成長が最大に達したところを、そのアミノ酸の必要量とします。
 窒素はたん白質以外の栄養素には含まれないため、窒素の出納から必要量を算定する「窒素出納法」が最もよく利用されてきました。窒素出納法では、摂取するアミノ酸に含まれる窒素の量と、糞便及び尿中に排泄される窒素の量が等しくなるところを、そのアミノ酸の必要量と考えます。
 また、血中のアミノ酸濃度の変化を見る方法もあります。アミノ酸を摂取すると、最初は体内でたん白質の材料として利用されますが、さらに摂取量を増やしていくと、やがて飽和し、血液中のアミノ酸レベルが急激に上昇してきます。この測定法では、上昇が開始したときのアミノ酸の摂取量を必要量とします。
 最近、新たに用いられている測定法は、炭素骨格にある種のマーク(安定同位元素、または放射性同位元素)をつけたアミノ酸を摂取させ、その動向を追う「アミノ酸酸化法」です(図6)。体内でそのアミノ酸が不足している状態では、その多くがたん白質合成に利用されますが、過剰になるとエネルギー源として消費され、炭素骨格が二酸化炭素となって呼気中に出てきます。その変曲を捉え、必要量を割り出します。
 1985年に、必須アミノ酸の必要量が大幅に改訂されたのも、測定法の変化が大きく影響しています。アミノ酸に限らず、多くの栄養素の必要量というのは、必ずしも確立されたものではありません。さまざまな要因で今後も変わる可能性があることを、認識しておいていただきたいと思います。

国際栄養の視点から〜ロシア、ベトナムでの大豆研究紹介〜

 最後に、現在私たちがロシアとベトナムで進めている研究をご紹介します。
 ロシアでは、大豆の栽培は行われていますが、大部分は家畜の飼料として利用され、食用に用いられることはほとんどありません。またロシア人は、虚血性心疾患や脳血管障害(脳出血)の死亡率が高く、2001年の調査ではロシア人男性の平均寿命は58.9歳、女性は71.8歳と、日本に比べ15〜20歳も短くなっています。このような現状をふまえ、ロシア人を対象として、大豆製品の摂取が肥満、及び循環器疾患の予防に及ぼす効果を検証しています。これまでのところ、1日あたり30gの大豆たん白質を含むパンを、2カ月間摂取したグループで、血清脂質の改善などが確認できています。
 ベトナムでは閉経期の女性を対象に、豆腐に含まれるカルシウムの生体利用効率と、カルシウムの必要量に関する研究を行っています。ベトナムでは閉経後の女性で、骨粗鬆症の発症率が急速に高まりますが、日本と同様、カルシウムの摂取が不足しているのが現状です。
 加えて、閉経期のベトナム人女性の、カルシウムの推定平均必要量(EAR:50%の人が必要量を満たすと推定される1日の摂取量)は550mg、推奨量(RDA:大部分のヒト(97%〜98%)で不足がおこらないと推定される1日の摂取量)は約700mgと、日本人とほぼ一致した結果を得ています。
 意外と知られていませんが、大豆はカルシウムが豊富で、カルシウムを含む凝固剤を使って豆腐に加工すると、さらに含量が高くなります。例えば100gあたりのカルシウムの量は、普通牛乳で110mg、木綿豆腐で120mgです。
 今回の研究では、豆腐のカルシウムは吸収率の点でも、牛乳のカルシウムに劣らないことが明らかになっています。このことから、アジアでなじみの深い豆腐は、含有量、吸収率の両面で、牛乳に負けないカルシウム源になり得ると期待されています。
 “畑の肉”といわれる大豆ですが、生活習慣病の予防にも効果が期待できることを考えると、大豆は“肉を超えた健康食品”ともいえるのではないでしょうか。
以上、山本茂先生の講演内容より抜粋)

古くて新しい大豆たん白質

 今回のセミナーでは、山本茂先生より大豆たん白質の栄養価をテーマに、これまでいわれてきたことや、誤解されやすいこと、最近、新たに分かってきたことなど、幅広い内容についてご講演いただきました。
 また、座長の山本孝史先生より「従来、大豆たん白質の栄養価は、牛乳や卵のたん白質に比べて低いとされてきましたが、1985年に必須アミノ酸の必要量が見直され、アミノ酸スコア100の優れたたん白質として評価されています。
 また、人間の体を構成する20種類のアミノ酸のうち、準必須アミノ酸(5種類)や非必須アミノ酸(6種類)も、体にとっての必要性という点からは、必須アミノ酸に劣らず重要である、という示唆に富むお話もありました。私たちはともすると、必須アミノ酸ばかりに気をとられがちですが、この点もぜひ再認識しておきたいところです」とコメントをいただきました。

講 師

山本 茂 先生(お茶の水女子大学大学院教授)

略歴
昭和43年 徳島大学医学部栄養学科卒業
昭和45年 コロンビア大学医学部大学院修士課程修了国際栄養学
(フルブライト留学生)
昭和50年 保健学博士 (徳島大学医学部栄養学科)
昭和50年 徳島大学助手医学部(栄養生理学講座)
昭和55-62年 ガーナ大学野口記念医学研究所に延べ約3年間派遣
昭和59年 徳島大学助教授医学部(栄養生理学講座)
昭和61-62年 ガーナ大学野口記念医学研究所に派遣
昭和62年 琉球大学教授医学部(保健学科基礎保健学講座栄養学分野)
平成 9年 徳島大学教授医学部(栄養学科実践栄養学講座)
平成16年 長年の共同研究がテキサス大学ヒューストン校と
徳島大学の姉妹校提携に発展
平成18年 お茶の水女子大学大学院教授(人間文化研究科)

座 長

山本 孝史 先生(長崎国際大学健康管理学部教授)

略歴
昭和50年 徳島大学医学部栄養学科卒業
昭和55年 徳島大学大学院(栄養学研究科)単位取得退学
昭和55年 徳島大学助手(医学部)
昭和56年-57年 ガーナ大学野口記念医学研究所に派遣
昭和58年 保健学博士(徳島大学)
昭和59年 不二製油株式会社(研究所)入社(平成14年3月まで)
平成9年 (財)不二たん白質研究振興財団(兼任)(平成14年3月まで)
平成14年 長崎国際大学 健康管理学部 健康栄養学科教授