大豆たん白を含む食品とがん
大豆たん白を含む食品の摂取で乳がん、前立腺がんおよび消化器系がんのリスクが減少
日本はいまや世界一の長寿国となりましたが、食生活の欧米化に伴い(図1)、生活習慣病患者が飛躍的に増加し、医療費の増大は社会問題となっています。
2005年の厚生労働省・人口動態統計によると、日本人の死亡原因は1位ががん、2位が心疾患(心臓病)、3位が脳血管疾患(脳卒中)となっており、このような状況のなか、大豆たん白を含む食品の心臓病予防効果やコレステロール低減効果、がんの予防効果などが注目されています。
図1 植物性たん白質と動物性たん白質の摂取量の変化
厚生労働省 平成16年国民健康・栄養調査
図2 日本のがん死亡率の推移(100,000人あたり)(乳がん・前立腺がん・消化器系がん)
厚生労働省 平成16年人口動態統計
図3 日本のがん罹患率の推移(100,000人あたり)(乳がん・前立腺がん・消化器系がん)
国立がんセンター がんの統計'05
1981年、日本人の死亡原因の1位として、初めてがんが脳血管疾患に取って代わりました。2004年の厚生労働省・人口動態統計では、がんによる死亡数は30万人を超えており、罹患率も1975年以来上昇傾向にあります。図2、図3は本資料に述べる乳がん、前立腺がんおよび消化器系がんの、日本における死亡率、罹患率の推移を示したものです。
がんは食事や運動によって予防できることを示すための、臨床疫学研究が世界中で行われています。米国がん協会は2002年、「健康的な食生活は、規則的、日常的な運動と併せた場合、がんのリスクを減少させることができるという強力な科学的根拠がある。米国におけるがんによる死亡の約35%は、食生活の改善によって回避可能である」とのガイドラインを発表しています※1)。
※1)米国がん協会「CA Cancer J Clin, 2002」
大豆たん白を含む食品のがん予防効果については、多くの疫学研究が行なわれており、米国の大手大豆たん白メーカーのソレイ社では、58の疫学研究(表1、表2)を対象に比較分析(メタ分析)を実施し、大豆たん白を含む食品の乳がん、前立腺がんおよび消化器系がんの予防効果について、科学的根拠を明らかにしました。
表1 58の疫学研究の概要
| 研究期間 | 集団(コホート)研究=2〜24年 症例対照研究=1〜34年 |
| 調査方法 | 食事摂取に関するアンケート |
表2 メタ分析の対象となった論文の内訳
| 乳がん | 前立腺がん | 消化器系がん | 合計 | |
| 日本 | 5 | 2 | 14 | 21 |
| その他アジア | 8 | 2 | 9 | 19 |
| 欧米 | 9 | 6 | 7 | 22 |
| 合計 | 22 | 10 | 30 | 62※ |
※合計数が58と異なるのは、1つの研究論文で複数のがんを対象とするものがあるため
大豆たん白を含む食品の摂取と乳がん
大豆たん白の摂取と、乳がんに罹患する相対的リスクを研究した疫学研究14件(1992年〜2003年)を、比較分析(メタ分析)した結果、大豆たん白を含む食品の摂取による、乳がん罹患統合リスク予測値は、0.78であることが判りました(図4)。これは大豆たん白を含む食品を摂ることにより、乳がんになるリスクが22%低くなることを意味しています。
図4 大豆たん白を含む食品の摂取と乳がんの罹患リスク
International Journal of Canger Prevention Vol.1, No.4, pp.281-293(2004)
A Meta-analysis of Soy foods and Risk of Breast Cancer in Women. Yan L1, Spitznagel EL2.
1Nutrition and Sciences, The Solae Company, St. Louis, MO 63188 USA
2Department of Mathematics, Washington University, St. Louis, MO63130
※相対リスク(RR値)は、罹患リスクの相対的な数値。1よりも小さければ、大豆食品を摂取した場合の罹患リスクが、摂取しない場合よりも低くなり、1よりも大きければ大豆食品を摂取した場合の罹患リスクが、摂取しない場合よりも高くなることを示しています。
乳がんの罹患リスクに関しては、思春期からの大豆食品の摂取頻度と、その後の乳がん罹患リスクとの相関関係を調べる研究も行なわれています。大豆食品を月に1食以下しか摂取しない場合の乳がん罹患リスクを1とした場合、月1〜3食摂取した場合は0.75(罹患リスクは25%低減)、さらに、週4食以上摂取した場合には0.51(リスクは半減)となることが示されています(図5)。
図5 思春期における大豆食品の摂取と乳がんの罹患リスク
大豆たん白を含む食品の摂取と前立腺がん
大豆たん白を含む食品摂取と、前立腺がんに罹患する相対的リスクを研究した疫学研究6件(1989年〜2003年)を、比較分析(メタ分析)した結果、大豆たん白を含む食品摂取による、前立腺がん罹患統合リスク予測値は、0.66であることが判りました(図6)。これは大豆たん白を含む食品を摂ることにより、前立腺がんになるリスクが34%低くなることを意味しています。
図6 大豆たん白を含む食品の摂取と前立腺がんの罹患リスク
Int J Cancer. 2005. Nov 20;117(4):667-9.
Meta-analysis of soy food and risk of prostate cancer in men. Yan L, Spitznagel EL.
Health and Nutrition, The Solae Company, St. Louis, MO 63188, USA. lyan@solae.com
※相対リスク(RR値)は、罹患リスクの相対的な数値。1よりも小さければ大豆食品を摂取すると、罹患リスクが摂取しない場合よりも罹患リスクが低くなり、1よりも大きければ大豆食品を摂取すると、摂取しない場合よりも高くなることを示します。
大豆たん白を含む食品の摂取と消化器系がん
大豆たん白を含む食品の摂取と、消化器系がんの罹患相対的リスクを研究した疫学研究29件(1990年〜2002年)を、比較分析(メタ分析)した結果、大豆たん白を含む食品摂取による、消化器系がん罹患統合リスク予測値は、0.70であることが判りました(図7)。これは大豆たん白を含む食品を摂ることにより、消化器系のがんになるリスクが30%低くなることを意味しています。
図7 大豆たん白を含む食品の摂取と消化器系がんの罹患リスク
ソレイ社資料より
※相対リスク(RR値)は、罹患リスクの相対的な数値。1よりも小さければ大豆食品を摂取すると、罹患リスクが摂取しない場合よりも罹患リスクが低くなり、1よりも大きければ大豆食品を摂取すると、摂取しない場合よりも高くなることを示します。



